ケータイが鳴って

お昼ごはんを食べて職場に戻る道すがら、どこかでケータイが鳴る音が。ああ、前を歩いている人のケータイが鳴っているんだなあと思って歩いてたんだけど、その音は前の人からズレていき、しまいには自分の足元から聞こえるように鳴ってました。
なんだこれはと立ち止まり辺りを見回してみると、ガードレール脚の台の上にケータイがポツンと置いてあり、それが鳴っていたのです。
ケータイ、しかも鳴っているとなると、やっぱり出た方がいいのかなあ、落とした人が探しているかもしれないし。でももしかしたら新手の詐欺かもしれないしと逡巡することしばし。
「もしもし……」
「ようやく出たな。お前の左側に箱があるだろう、開けてみろ」
「これは……爆弾!!」
「赤と青のコードどちらか正しい方を切れば爆発は止められるぞ、間違えれば……分かるな、この辺りは木っ端微塵だ」
「なんで俺が……!!」
「お前が選ばれたんだよ……じゃあな……」
「おい、待てよ!!……プープー」
みたいなサスペンス的な展開も考えられたんだけど、とりあえず出てみました。そしたら詐欺でもサスペンスでもなく、やはり落とした人がかけているようでした。
落とした相手もこの場所から少し離れたところに移動していたみたいでしたが、ラッキーなことに自分がこれから戻る職場と同じ方向だったので、それなら近所まで持っていきますよってことにして、無事に返すことができました。
これが職場とは反対の方向だったり、落とした人がかなり遠くまで行ってしまってたらちょいと面倒だったけど、うまいことことが運んでよかった。ケータイも鳴ってなかったら気づかなかったかもしれないし、いいタイミングで鳴ってたもんだなあ。落としたケータイがらくらくホン的なケータイで、落とした人もらくらくホン的な年齢の方だったので、キュンとすることもなく、ああ、いいコトしたなあっていう爽やかな気持ちが得られたお昼休みでした。